ライブコマースは日本ではまだ馴染みの薄く、導入している企業や店舗はごく一部となっています。しかし、中国では既に浸透しているビジネスで、欧米でもたくさんの成功事例があります。日本でも拡大しているEC市場の中でこのライブコマースのビジネスモデルは大きな可能性を秘めていると期待されており、ライブコマースの認知が高まっています。
新型コロナウイルスの感染拡大でライフスタイルや購買行動に変化
世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響で、世界中で外出を自粛する傾向が強まっていました。そして外に出なくても買い物ができる出前サービスやEコマースが注目を集めました。また、気軽に実店舗で買い物しにくい状況だからこそ、実店舗で買い物をしているような臨場感を得られるライブコマースが注目されています。ライブコマースであれば、いつでもどこでも好きな時に動画を通じて配信者とユーザーがコミュニケーションを取ることができ、リアルタイムで質問やリクエストなどができるので、実店舗で商品を手にとって購入するような臨場感を楽しむことができます。
百貨店や国内大手アパレルも参入
百貨店や国内大手アパレルでもEコマースに参入しています、新型コロナウイルスの影響でこれまで賑わっていた訪日外国人観光客の売上が一気になくなり、新しい販路を開拓する動きが活発化しています。百貨店では中国人に人気のコスメやブランド品、お菓子などをライブ配信を通じて中国向けに販売しています。また、これまで実店舗での販売が主体だったアパレル業界でもED参入の課題として細かな商品情報を伝えることが課題でした。通常のECサイトだと得られる情報は少なく、モデル写真やサイトのデザインでしか判断ができませんでした。ライブコマース では購入判断までの情報が豊富にあり、素材や質感・サイズや色合いなど、ユーザーにとって必要な情報が得ることができ、購買につながる可能性が広がります。配信者に服を着てもらい、着心地の感想を聞いたり、ポーズをリクエストするなど、ライブコマースとアパレル業界の相性はとても良く、注目を集めています。国内大手アパレルでもライブコマースの実施に向けて、実証実験などが繰り広げられています。
5Gの普及でライブコマースが一気に飛躍
5Gは「第5世代移動通信システム」のことで、「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つの特徴があります。5Gは4Gに比べて通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続数は10倍となっており、日本でも一部の都市で商用サービスがスタートし、次世代の通信インフラとして社会に大きな技術革新をもたらすといわれています。そして全国に拡大していくと、コミュニケーションの世界においてあらゆるもの同士がつながり、ライブコマースでも多くの人達が同時接続しても快適に通信・視聴が続けられる環境とります。5Gが普及するとこれまでにない新たなサービスやビジネスを展開できることにあり、ライブコマースでも日本独自の進化が期待されます。
ライブコマースはD2Cに向いている
D2CとはDirect to Consumerの略で、自ら企画、生産した商品を代理店や卸問屋を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法のことです。SNSやECサイト、実店舗で消費者とコミュニケーションをとり、自ら企画、生産した商品を直接顧客に販売します。こうしたD2Cビジネスは主にSNSやECサイトを活用する若者とよばれるミレムアム世代(2000年以降に成人を迎える世代)をターゲットとしており、ライブコマースが求めるターゲット層と一致します。既に若者の世代では17ライブやTikTokなどのライブ動画が浸透しており、ミレミアム世代が求める動画コンテンツとECショップを融合させたものがライブコマースで求められていくのかもしれません。ミレニアム世代はD2Cを日常的に利用しており、ライブコマースとの親和性は非常に高くなっています。
また、D2Cはアパレルやコスメ・美容関係がミレニアム世代で強いと言われています。また40代以上の世代でも家電やスポーツ用品、グルメなどでD2Cとの相性がよく、テレビショッピングではこうした商品が売れている傾向があります。動画を通じてリアルな商品情報を伝えられるライブコマースは世代を超えて楽しむことができます。
これから求められるライブコマースでは商品情報をどれだけ詳細に伝えられるかが課題となります。リアルタイムにコミュニケーションがとれるライブコマースなら、より詳しい情報をより深く伝えられることができ、これまでECサイトでできなかった実店舗で買い物をしているような感覚が体験でき、新しい買い物のスタイルになっていくと期待されています。
ライブ配信は配信者によって売上が大きく左右する
ライブ配信は誰もが動画で商品を紹介すれば売れるというものではありません。誰が商品を紹介するかが重要な要素です。SNSでも有名なインフルエンサーが商品を紹介すると一気に売上がったり、テレビで紹介されると一気にお店に行列ができるようになります。こうした影響力がライブ配信でも求められています。しかし、日本ではまだこうした影響力を持った人がライブコマースの業界では存在していません。インスタグラムで影響力を持つ人がインスタグラマーと称されたり、YouTubeではYouTuber、ライブ配信の世界でもライバーと呼ばれる人が活躍しています。こうした影響力を持って活躍しているインスタグラマー、YouTuber、ライバーがもっている才能やスキルと販売スキルは違っており、商品を売るための環境や知識が必要とされています。「この人がおすすめする商品ならぜひ購入したい」と思ってもらえる環境を整えることが、これからのライブコマースに求められる課題になっています。
インスタグラムやYouTubeでは若者が憧れるライフスタイルやコンテンツは配信され、若者の憧れとなっています。また、ミドル世代に人気のテレビショッピングでは誰もがその商品を欲しくなる演出が施され、思わず電話したくなる要素がたくさんあります。ミレニアム世代が求める憧れと、ミドル世代が求める演出を上手く掛け合わせることで、ライブコマース市場が一気に成長すると考えられます。